仕事と妊活

不妊治療の休暇制度・会社にある制度を確認する方法

グレージュの水彩背景に小さなアナログ置き時計が置かれたイラスト ― 不妊治療の休暇制度を会社で確認する方法を整理する

通院が増えてきたとき、「有休でどうにかするしかないのかな」と感じている方は少なくありません。それはよくある状況です。ただ、会社にある制度を一度確認してみると、選択肢が少し見えてくることがあります。

この記事では、自分の会社に制度があるかを確認する手順と、不妊治療と仕事の両立に関わる制度の種類を整理します。

まず確認する2つのこと

まず就業規則を見る

特別休暇の項目に、不妊治療・出産サポート・生殖補助医療などの記載がないか確認します。社内イントラネットや人事担当者への問い合わせで取り寄せられる場合があります。

次に人事担当者に聞く

就業規則だけでは分からない場合、人事担当者に直接確認するのが確実です。「不妊治療のための休暇や勤務形態の制度はありますか」と聞くだけで十分です。治療の詳細を話す必要はなく、制度の有無を問い合わせる段階では業務上の問い合わせとして行えます。

不妊治療のための専用休暇は、法律で義務づけられているわけではない

不妊治療のための専用休暇を設けることは、法律で企業に義務づけられていません。あくまで企業が就業規則に任意で設ける特別休暇として存在するものです。そのため、制度があるかどうかは会社によって異なります。

厚生労働省の令和5年度調査によると、不妊治療を行っている従業員が受けられる支援制度がある企業は約4社に1社(26.5%)とされています(2023年度調査)。同調査では、不妊治療経験者のうち、仕事との両立ができずに離職した人は約1割(10.9%)と報告されています。

「制度がない会社の方が多い」という実情を知った上で、まず自分の会社にどれがあるかを確認するところが出発点です。

会社で使える可能性のある制度の種類

厚生労働省は、不妊治療と仕事の両立のために企業が整備することを推奨する制度として、以下を挙げています(くるみんプラス認定基準でも使われている分類です)。

  1. 不妊治療のための休暇制度(企業独自の特別休暇)
  2. 半日または時間単位の年次有給休暇(会社と従業員代表の間で労使協定※が締結されている場合に、年5日分を上限として時間単位での取得が可能)
  3. 所定外労働の制限制度(残業の免除を申請できる制度)
  4. 時差出勤制度
  5. フレックスタイム制
  6. 短時間勤務制度
  7. テレワーク

※労使協定とは、会社と従業員代表が結ぶ書面による取り決めのことです。

1〜7のうちどれが自社に整備されているかは、就業規則または人事・労務担当者への確認が出発点になります。制度の名称が異なる場合もあるため、「通院のための調整ができる制度があるか」という聞き方でも確認しやすいです。

なお、時間単位の年次有給休暇は、労使協定が締結されていることが前提です(労働基準法第39条第4項)。協定の有無は人事担当者に確認してください。詳細な条件は参考セクションの厚労省リンクでも確認できます。

職場への伝え方とプライバシーの考え方

不妊治療の事実を会社に伝える義務はありません。厚生労働省も、プライバシー保護の重要性を明示しており、「誰にどこまで伝えるか」は本人が判断してよいとしています。

伝える場合は、治療の詳細(医学的な内容)ではなく「業務への影響に関する情報」で十分とされています。たとえば「定期的な通院があるため、週に1〜2回、午前の早退または半休が必要になることがあります」といった伝え方です。

職場への伝え方については全部話さなくていい。職場への妊活の伝え方、部分開示という選択肢もあわせてご覧ください。

不妊治療連絡カードについて

厚生労働省は、「不妊治療連絡カード」を作成・公開しています。主治医が治療の実施時期や配慮が必要な事項を記入し、会社の人事担当者や上司に提出するための任意様式です。言葉で説明しにくい場合に活用できます。PDF形式でダウンロードできます(詳細は下記の参考リンクから)。

ただし、このカードは任意様式であり、提出することで会社が必ず制度を提供する義務が生じるわけではありません。会社に制度がなければ、カードがあっても利用できる制度は存在しません。

くるみんプラスとは何か

「くるみん」は、子育て支援の取り組みが一定の基準を満たした企業を国が認定する制度です。「くるみんプラス」は2022年4月から始まった上乗せ認定で、くるみんなどの子育て支援認定を取得済みの企業が、追加で不妊治療両立支援の基準を満たした場合に認定されます。

認定の基準には、不妊治療のための休暇制度の設置、時間単位有給休暇またはフレックスタイム制などの整備、担当者の選任と周知、社員への理解促進の取り組みなどが含まれます。詳細な認定基準は厚労省の公式ページ(参考リンク)で確認できます。

ただし、くるみんプラスの認定は企業に対するものであり、その企業の従業員であれば誰でも制度を利用できることを保証するものではありません。実際に使えるかどうかは、勤務形態・在籍期間・個別の就業規則によって異なります。

関連する公的制度(医療費控除・傷病手当金)

会社の制度とは別に、個人として申請できる公的な枠組みも把握しておくと役立つ場合があります。以下は概要のみ整理します。詳細は参考セクションの各公的機関リンクをご覧ください。

医療費控除

国税庁の公式情報によると、「医師による診療等の対価として支払われる不妊症の治療費及び人工授精の費用は、医療費控除の対象となります」とされています。

医療費控除は、確定申告で申請するものです(年末調整ではできません)。計算の枠組みは「(医療費の合計)-(保険金等で補填された額)-(10万円または総所得金額の5%、いずれか低い方)」で、上限は200万円です。

公共交通機関を使った通院の交通費は対象になる場合があるとされています。自家用車のガソリン代やサプリメントは、一般的に対象外とする見解が多いとされていますが、個別の状況によって判断が異なる場合があります。詳しくは国税庁のウェブサイトまたは税理士にご相談ください。

医療費全体の把握には妊活にかかるお金の全体像、何に備えると安心?も参考にしてください。

傷病手当金

傷病手当金は、健康保険(協会けんぽ・組合健保など)に加入している場合に、以下の要件を満たすと申請できる制度です。

  1. 業務外の病気やケガであること
  2. 医師が「労務不能」と診断していること
  3. 連続して3日以上休業し、4日目以降も休業していること
  4. 給与の支払いがないこと

要件を満たした場合に申請の対象となりますが、認定や支給額は健保組合の判断によります。

傷病手当金の「労務不能」の認定は医師が判断します。不妊治療に伴う通院そのものが直ちに労務不能と判断されるとは限りません。治療に伴う体調不良などで医師が労務不能と診断した場合に、申請の検討対象になります。

なお、国民健康保険(自営業・フリーランスなど)では、傷病手当金の給付は原則として設けられていません。ただし一部の自治体・国保組合が独自の給付制度を持つ場合があるため、加入先に確認してみてください。

詳細は協会けんぽのご案内または加入している健保組合にご確認ください。高額療養費制度との関係については高額療養費制度は妊活でどう関係する?もあわせてご覧ください。

まとめ

不妊治療のための専用休暇は法律上の義務ではなく、制度があるかどうかは会社によって異なります。

  • まず就業規則を確認し、不明な場合は人事担当者に問い合わせる
  • 制度がなければ年次有給休暇やフレックスタイム制などが現実的な選択肢になる
  • 医療費控除・傷病手当金については枠組みを把握した上で、詳細は国税庁・健保組合に確認する

まず自分の会社にある制度を確認するところから始めると、選択肢が少し見えてきます。次のステップとして、仕事との両立の全体像を整理したい方は「次の一歩」セクションも参考にしてください。

FAQ

Q. 不妊治療のための専用休暇が会社にない場合、どうすればよいですか?

専用の休暇制度がない場合、年次有給休暇の活用が基本的な選択肢になります。また、フレックスタイム制や時差出勤の制度があれば、通院の時間を調整しやすい場合があります。制度がないことは法律違反ではなく、会社の現状によります。有給の使い方の考え方については妊活中の有休のやりくり、後悔しにくい考え方も参考にしてください。

Q. 職場に不妊治療のことを話さなければ、制度は使えないですか?

会社の制度によります。一部の制度(時間単位の有給休暇など)は、理由を問わず申請できる場合があります。一方、不妊治療向けの特別休暇の場合は、利用目的の申告が必要なケースもあります。人事担当者に「どこまで伝える必要があるか」を事前に確認するのが確実です。

Q. 不妊治療の医療費控除は、夫婦どちらの確定申告で申請すればよいですか?

医療費控除は生計を一にする家族の医療費をまとめて申告できます。所得が高い方の申告で申請する方が控除額が大きくなる場合があります。ただし個別の状況によって異なるため、詳細は国税庁のウェブサイトまたは税理士にご確認ください。

Q. くるみんプラスの認定企業かどうかは、どうやって調べますか?

厚生労働省のウェブサイトで認定企業の一覧を確認できます。ただし、リストに掲載されていても自分が利用できる制度があるかは別であり、人事担当者への確認が必要です。

次の一歩

仕事との両立の全体像を把握したい方仕事と妊活を両立するには?予定と気持ちの整え方が起点になります。

通院の予定管理の工夫を知りたい方通院が増えそうなとき、仕事の調整はどう考える?で具体的な段取りの考え方を整理しています。

職場への伝え方が気になる方全部話さなくていい。職場への妊活の伝え方、部分開示という選択肢もあわせてご覧ください。

本記事は公的機関・公的資料をもとに制作した情報提供を目的としたものです。医療上の判断、法的判断、税務判断を行うものではありません。制度・数値は変更されることがあるため、最新情報は各公的機関の公式ページおよび専門家にご確認ください。

本記事は情報提供を目的としたもので、医療上の助言や診断ではありません。体調や治療に関する判断は医療機関にご相談ください。制度・費用・保険の内容は変わることがあるため、最新の情報は公式の案内でご確認ください。

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