人工授精(AIH)とは?流れ・費用・タイミング法との違いを整理
人工授精について検索する理由は、人によって違います。医師から「次のステップとして考えてみましょう」と提案された方もいれば、自分で先に調べておきたい方、パートナーと一緒に見ている方もいるでしょう。
この記事は、何かを今すぐ決めるためのものではありません。人工授精がどんな治療か、タイミング法とは何が違うのか、流れや費用・保険の基本を、公的情報をもとに整理します。診断や治療方針の判断はできませんが、受診の前に落ち着いて整理するための材料としてお使いください。
人工授精とは?
人工授精(AIH:配偶者間人工授精)とは、採取・処理した精子を子宮内に注入し、その後の受精を体内で待つ方法です。受精は体内(卵管)で起こる点がタイミング法と共通しており、体外受精・顕微授精(ART)のように体の外で受精させるわけではありません。
不妊治療の中では「一般不妊治療」に分類され、タイミング法の次のステップとして位置づけられることが多い方法です。
(参考:日本産科婦人科学会、こども家庭庁)
タイミング法と人工授精の2つの違い
タイミング法と人工授精は、どちらも体内(卵管)での受精を前提にした一般不妊治療です。主な違いは次の2点です。
1. 精子を届ける経路が違う
タイミング法は性交渉によって精子が子宮へ向かいます。人工授精では、採取した精子を洗浄・濃縮処理したうえで、カテーテルを使って子宮内に直接注入します。
2. 精子の選別・処理をおこなう
注入の前に、運動性の高い精子を選別・濃縮します。
どちらの方法が自分たちに向いているかは、検査結果をふまえて医師と相談して決まります。不妊治療全体の流れは不妊治療のステップ全体像(タイミング法から体外受精まで)もあわせてご覧ください。
どんなときに検討される?
以下は、人工授精が検討されることがあるとして、公的情報や専門情報でよく挙げられる状況の例です。自分で当てはまるかどうかを判断するためのものではありません。
- 精子の数や運動率など、精子の状態に課題がある場合
- 頸管粘液(子宮頸管の粘液)の状態が精子の通過に影響している可能性がある場合
- タイミング法を一定期間試みたが妊娠に至っていない場合
- 原因が特定できない不妊(原因不明不妊)
これらの状況で人工授精が検討されることがありますが、当てはまるからといって人工授精が必ず適している、あるいは効果があるという意味ではありません。実際に適しているかどうかは、検査結果や個人の状況をふまえて医師と相談して決まります。
(参考:日本産科婦人科学会、日本産婦人科医会、こども家庭庁)
人工授精の流れ
医療機関によって進め方は異なりますが、一般的な流れは次のようになります。
1. 排卵のタイミングを確認する
超音波検査などで卵胞の発育状況を確認し、排卵のタイミングを推定します。場合によってはホルモン検査もあわせておこなわれます。
2. 精子を採取・処理する
当日、パートナーが精子を採取します。採取した精子は洗浄・濃縮などの処理をおこない、注入に適した状態に調整します。
3. 子宮内に注入する
細いカテーテルを使って、処理した精子を子宮内に注入します。処置そのものは比較的短時間で終わります。
4. 判定を待つ
注入後、一定期間が経過したのちに妊娠判定をおこないます。処置の具体的な内容・通院スケジュール・注意事項は医療機関によって異なるため、事前に担当医に確認するとよいでしょう。
何回くらいおこなう?
何回行うか、いつ次のステップを考えるかに、全員共通の決まりはありません。
こども家庭庁の情報では、一般的に3〜6回程度実施される例が多いとされています。ただしこれは参考の範囲であり、実際の回数は年齢・検査結果・治療歴・ご本人の希望をふまえて医師と相談して決まります。複数回にわたって行うことが多いと、あらかじめ知っておくと気持ちの準備がしやすいかもしれません。
人工授精を続けても妊娠に至らない場合は、担当医から体外受精などへのステップアップが提案されることがあります。
費用と保険について
2022年4月から、人工授精は公的医療保険の適用対象です(一般不妊治療として保険診療が受けられます)。自己負担は原則3割です。
人工授精(一般不妊治療)については、現行の制度では年齢や回数の制限は設けられていません。治療開始時の年齢や回数に条件があるのは、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療(ART)です(2026年6月時点。制度は改定されることがあります)。
実際の費用は治療内容や医療機関によって異なります。費用の目安や保険の仕組みは、次の記事で整理しています。
- 保険適用の枠組み:不妊治療の保険適用、どこまで対象?基本を整理
- 費用全体の考え方:妊活にかかるお金の全体像、何に備えると安心?
最新の制度・費用は、医療機関や公的窓口でご確認ください。
FAQ(よくある質問)
Q. 人工授精は痛い?体への負担はありますか?
処置自体は短時間で、注入そのものの身体的な負担は比較的少ないとされています。ただし「負担がない」「安全」と言い切れるものではなく、感じ方には個人差があります。なお、排卵誘発剤を併用する場合は、多胎妊娠の可能性などを考慮することがあります。気になることや不安は、事前に担当医に確認してください。
Q. 人工授精と体外受精は何が違うのですか?
大きな違いは「受精が体内か体外か」です。人工授精は処理した精子を子宮内に注入し、体の中(卵管)で受精を待ちます。体外受精は採卵をおこない、体外で受精させた胚を子宮に戻す方法です。どちらが自分たちに適しているかは、検査結果や状況をふまえて医師と相談して決まります。
Q. 人工授精に年齢や回数の制限はありますか?
人工授精は一般不妊治療にあたり、現行の制度では保険診療における年齢や回数の制限は設けられていません。治療開始時の年齢や回数に条件があるのは、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療です(2026年6月時点。制度は改定されることがあるため、最新は医療機関や公的窓口でご確認ください)。なお、年齢によって妊娠率が変わることは、保険の制限とは別の話です。何回続けるか・次に進むかは、年齢や状況をふまえて医師と相談して決めるものです。
次の一歩
まだ受診していない方・初診を検討している方:受診を考える目安や準備については、妊活で病院はいつ行く?受診を考える目安を整理と受診前に整理しておくと安心なことをご覧ください。
タイミング法と比較して整理したい方:タイミング法とは?自己流との違いと、受診を検討するときの考え方や妊活と不妊治療の違いは?どこで何が変わるのかまで整理もあわせてどうぞ。
費用・保険を整理したい方:不妊治療の保険適用、どこまで対象?基本を整理、妊活にかかるお金の全体像、何に備えると安心?をご覧ください。
本記事は情報提供を目的としたもので、医療上の助言や診断ではありません。体調や治療に関する判断は医療機関にご相談ください。制度・費用・保険の内容は変わることがあるため、最新の情報は公式の案内でご確認ください。